気がつくと、圭の手が僕のからだに触っていた。
別にセックスの前戯としてやってるわけじゃなくて、僕を確認するって感じで撫でていたけど。
でも、それは眠りかけている僕にとっては迷惑この上ないものだ。
どうしてこの手は僕の敏感なところばかりに触れて来るんだろうね。
「圭。いいかげんにして。もう眠りたいんだ。」
僕は圭の手を握りとって、悪戯をやめさせた。
「すみません。君のからだは触り心地がいいものですから」
「別に君を楽しませるためのものじゃないんだけどね」
「いえ、充分に楽しませてくれていますよ」
そんな赤面するようなことをどうして言えるんだか!
「とにかく!僕は眠いんだ。悪戯はやめて」
僕はくるりと圭に背を向けると、しっかりと寝る姿勢をとって目を閉じた。
「悠季。僕は目が冴えてしまったのですが」
わざわざ枕から頭を上げて、恨めしげな声でささやいてきた。でも、甘いバリトンを僕の耳に吹きこまれても困る。僕は眠いんだ。
「悠季?」
そろそろと僕の機嫌を伺うように、僕の肩やわき腹を撫でている。僕は無視して寝ている事に決めた。反応を示さなければそのうち諦めて止めるだろう。
僕が怒らなかったのをいいことに、圭の手はだんだん大胆に僕に触れてきた。でもそのさわり方はいつものような僕をその気にさせようとするものではなく、ゆるゆると優しく、子猫でも愛撫しているかのように愛しげに思える。
最初はパジャマの上から、そしてそのうちにパジャマの裾から手を入れてわき腹から腹を撫で回し、上へと上がって僕の胸筋を撫でさすってきた。柔らかな愛撫は僕をマッサージするかのようで、僕はうっとりとその手に身をゆだねていた。
圭の手は僕の乳首を丁寧に愛撫し始めた。くるりと撫で回すとつまんでみたりもんでみたり。
「んー!」
僕が言葉を出さずに身をよじって抗議すると、するりと手が外れた。ほっとしていたら、その手がするりと下のほうへと動いていった。
パジャマの上からゆるゆると僕の下半身を撫で回しているのがなんとももどかしくて・・・・・!
「だから!僕は眠いんだって!」
「寝ていていいです」
今更そんなことを言われてもなぁ・・・・・!
圭の手が今度はズボンの中に入り込んで、尻を撫で回し始めてきた。尻の間、腰の付け根あたりをゆるゆると触られると思わず反応してしまう。
「圭っ!」
僕の叱責を聞いたせいか、圭の手はそれ以上入り込まずに太ももの方へと進んでいった。膝の内側や裏側まで・・・・・。そんなところにも僕の性感帯があることを圭はよく知っている。
僕は股間に熱がじんわりと溜まってくるのがじりじりとした感覚で、もじもじと腰が揺れてしまう。
「・・・・・もしや、我慢できなくなりましたか?」
それじゃまるで僕が我慢比べでもしていたみたいじゃないか!
僕はぎゅっと口をつぐんで彼の意のままにならないようにと声を出さないようにした。今日は講師の仕事があった日で眠いんだ。ここで声でもだそうものなら調子づいて最後までなだれ込んでしまうに決まっている。それは困る。
ふてくされた気分で黙っていると、今度は僕自身を下着の上からやわやわと揉んで・・・・・。
こ、こらっ!
「そのまま寝ていていいです」
寝ていろって?!そんな口説きモードのバリトンを吹き込んでおいて?
きゅっとあそこが熱くなってしまって、僕は思わずうめいてしまった。眠気なんて吹っ飛んでしまってる!もうそろそろ限界が近い気がするんだ。
「圭っ!もういいかげんにしてくれよ」
僕はくるりと振り向くと、そこにはいかにも嬉しそうな圭の笑顔が!
まるで無邪気な悪戯っ子が満面の笑顔を見せて僕に笑いかけているようで・・・・・怒っていたのが一気に脱力した。
「君ってヤツは・・・・・」
確かに圭って男は大人だけど、僕といる時だけ子供に戻ったようにダダをこねる事がある。
「明日も出かける用事があるんだからね。もういいかげんに・・・・・!」
「ええ。君のスケジュールは把握しています。明日はきっちり君の予定に合わせるようにしますよ」
僕が疑わしげに睨むと圭は苦笑してキスを求めてきた。
「・・・・・ん・・・・・」
甘い口づけを堪能して、一つため息がこぼれた。
「では、はじめてもよろしいですね?」
圭のからだがのしかかってきた。
「別に納得したわけじゃないけどね」
僕が不機嫌そうに言うと、一転して圭の目が困ったように揺れた。
「・・・・・すみません。どうやら機嫌をそこねてしまったようですね」
あっという間に悲しそうな目になった。そんな幼い子供みたいな目をされてもなぁ。
「なんだか今夜の君は寂しがり屋の子供になっているみたいだね」
「・・・・・ええ」
自分の弱みを見せたがらないやつだから、こんなときも自分からはなかなか言い出しては来ない。でも暗い夜の闇の中は内緒話に最適な時間で、圭も自分の気持ちを言うつもりになったらしい。
渋々ながらだけど、話し出してくれた。
「君はおばあ様や母上と添い寝してもらっていたんでしたね」
「・・・・・うん?」
「僕は添い寝をしたもらった記憶がないのです」
「ええと、燦子お母さんに?」
「はい」
「・・・・・伊沢さんとかにも?」
「ええ。彼には寝る前に絵本を読んでもらっていたのですが、それも1冊と決まっていましたし、読み終われば自分の部屋へと引き取っていましたから」
圭の部屋は行った事があるから、どんな部屋かは覚えている。今の圭にはふさわしいかもしれないけど、小さな子供には大きすぎるし、いかめし過ぎる雰囲気だった。
小さい子供があの部屋に一人で寝るのは寂しすぎると思う。それが桐院家の教育方針だったのかもしれないけど、その頃の圭のことを考えると僕には切なすぎる。
でも、僕は君のお母さんにはなれないよ?
「君のぬくもりは僕にとってなによりの慰めですので」
圭はそう言うと、自分の告白に照れたように僕の首筋に顔をうずめてしまった。
「僕は君に溺れている。君という存在がなくてはいられない。君依存は克服したつもりではありますが、それでも君と一緒にベッドにいるとき、一番の安らぎを得ているのです。
先ほどそんな幸福感を味わっていたのです。すみません。自分で自分の幸福を壊すような行為をしてしまったようです。
どうかこのまま寝てください。僕はもう邪魔はしませんから」
「・・・・・うん」
圭は心から謝罪してみせると、僕に背を向けて掛け布団を引き被った。でも、その姿は大きな子供がすねているように見えるけど。
「・・・・・いいよ。僕が添い寝をするには君は大きくなりすぎてるけど、一緒の夢を紡ぐことは出来るから」
そう言って起き上がって、すねている圭の唇にキスを落とした。
「このまま寝ちゃう?それとも僕と愛し合わないかい?なんだか僕の目も冴えちゃって」
「悠季?」
圭はくるりとからだを返して僕と目を合わせた。
「いいんですか?」
「早くしないと気分がかわっちゃうよ?」
そう言ってからかってみせると、圭は嬉しそうに笑うとくるりと僕とからだの位置を逆転させた。
「け、圭っ?」
「ありがとう。君は天使のように寛大だ!」
・・・・・僕ときたら次の日、下半身の鈍い重さにため息をつきながらも、後悔していないんだ。ヨかったってこともあるけど、圭がいかにも嬉しそうな顔をしているのがぼくにとってもとても嬉しくて。
でも、何回もあったら身が持たないことだけどね。
・・・・・ああ、腰がだるい・・・・・。はぁ。
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書いているうちに、これは「語られなかった物語」の続編みたいだなぁと思いました。(笑)
圭がグチって、悠季が甘やかす話です。
でも、ここで止めると圭らしくない・・・・・ですよね?
ということで、裏星 ↓ で いちゃいちゃやってます。(爆)
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