夜の真実、朝の現実











「あ、はあ・・・・・ん・・・・・う・・・・・」

寝室は快適な温度が保たれているはずなのに、二人の熱で蒸れているように思えた。

圭の指。圭の掌。圭の唇。圭の舌・・・・・。

全てを確かめ味わうかのように僕のからだに触れてくる。

首筋から鎖骨のくぼみへ。赤くしこった乳首はおざなりに愛撫されて、不満のうめきがあがる。

「悠季・・・・・。ああ、君のにおいだ」

胸のあたりに鼻をすりつけるようにして圭がつぶやくと、その振動にぞくりと快感が走った。

脇の下も、脇腹も、臍や下腹部にもしつような愛撫が続いていく。

「僕も・・・・・」

圭に触りたいと思ったのに、伸ばされた手は封じられた。

「今夜は君を味わわせて欲しいのです。君は受け止めていてください」

ただ施される愛撫は、からだの芯に熱をこもらせる。

うねる欲望が下半身に凝り、下肢をよじらせて必死でやりすごそうとあがく。

「ねえ、触って」

思わず懇願してしまった。おざなりにされた胸がじんと熱い。

「ここですか?触れないとつらい?」

くるりと指で撫でられて、びくんと腰が浮いた。

「愛らしい飾りですね。こんなところも君は綺麗なのだと改めて思い知ります」

そんな言葉に続いたのは、強烈な快感。

「ああっ!」

乳首を舐めしゃぶられていたかと思ったら、きゅっと甘がみされた。

激痛に変わるほんの少し手前。快感と苦痛との狭間の悦楽。

つうっと下腹部に滴り落ちるものがある。

既に立ち上がって愛撫の手を待っている昂ぶりからしずくがこぼれ落ちていた。

「ああ、失敬。こちらを、いや、こちらも触って欲しかったのですね」

僕のからだは圭の愛撫の手にすっかり慣れていて、もっと先をと望み続けている。

うわごとのように、触れて欲しいところを、どんなふうにして欲しいのかそのやり方を口走っていて、圭を喜ばせた。

だから、圭の指が僕の中に入ってきたときには既に準備が出来ていて、ぎゅっと引き絞っていた。

深く浅くかきまわされてほぐされていくうちに、すぐに物足りなくなってしまう。

奥はじりじりとうずき、もっと違うものを欲しがって熱く締め付けてきた。

「ねえ、もう・・・・・」

潤んだ瞳が圭の顔を捜す。

「悠季」

圭の顔は愛しげにそして少し悲しげな表情で僕を見つめていた。

ぐっと熱く重量感のあるモノがそこに押し付けられて、ゆっくりと僕の中に入り込んでくる!

思わずあえいでしまうくらい、大きい。

それでも僕は数日間のブランクなどものともせずに喜んで迎え入れると、無意識のうちに腰を浮かせて更に奥へと誘い込む。

いつもは届かないような奥まで、ぐっと押し込まれてきて、

「ああっ!」

のどをのけぞらせて悲鳴のような歓喜の声をあげていた。

「あ、ご、ごめ・・・・・」

我慢しきれなくて、圭の腹へと熱いほとばしりを散らせてしまっていた。

「これからです!」

「待って。ま、まだ無理っ・・・・・!だめっ!」

快感の余熱に収縮し続ける中を引きずるようにして、圭が動き続けてきた。

「あ・・・・・やっ・・・・・そんな・・・・・ひっ!」

無理やり次の快楽の波へと引っ張り揚げられて、僕は苦しくも甘い叫びをあげていた。

「・・・・・言っておいたでしょう?容赦出来ませんよ、と」

容赦のない愛撫が、苦痛と悦楽の境を失っていく。








もうろうとした意識の中、それでも僕は圭の愛撫に反応して腰を振り「もっと」とつぶやいていた。

手も上がらず、声もかすれていたにもかかわらず。

搾り取られるようにして出し尽くされ、もう露をにじませることも苦痛となっていて、それでも追い上げられ続けて、下半身は重だるく鈍い。

「悠季、悠季、ゆうき・・・・・!」


何度もささやかれる言葉。

そのたびに僕は反応を返す。













「・・・・・悠季?大丈夫ですか?」

いくらか不安げな声に、いつの間にか気を失っていた僕は、重くてなかなか上がらない瞼をようやく上げた。

見れば、ぼんやりとした視界の中でも、圭の肩には僕がつけた歯形がくっきりと残っているのが見えた。

その他にも、いくつものキスマークが僕の狂乱ぶりを教えてくれる。

あれは僕も圭との行為を喜んでいるという事実。

二人が共犯であるという、なによりの証。

それが何よりも嬉しくて、動きにくくなっている口元を何とか上げて、笑みにした。

例え明日、いや今日の朝、僕のからだが悲鳴を上げて枕から頭が上がらなくなったとしても、こんな風に愛を交わせる相手がいるのだから、本望というものだ。

とは言え、僕の方はよれよれでも、圭の方はは何事もなかったかのように、澄ました顔で紳士然とした顔に戻っているだろうなあと思う。




「・・・・・圭、愛しているよ」

かすれきった声で、僕はささやく。

「ええ、僕も愛していますよ」

甘い微笑みとやさしいキスが僕に降りそそぎ、僕は安堵と満ち足りた思いを抱えて眠りの中へと墜ちていった。
















「惑いと光と」の話で、ベッドの中でどうなっていたかの話です。
まあ、いつもながらのいちゃいちゃになってしまいました。(笑)









2010.10/24 up