妄想文&感想文
本編終了後のアンコールシリーズと銘打って始まった(らしい)外伝。
本編最後ではページ数の制限のせいか、盛り込みすぎになってしまったようで、消化不良気味の終わり方になってしまったのが残念でしたが、外伝になってからは肩の力が抜けたようで、悠季視点という制約にも時制にも縛られなくなって、生き生きとした内容になっているようです。
二本立てですが、最初の「ビオラを買いに」は圭の視点で描かれています。
長くなっちゃってる春休み(by悠季)を満喫していた圭ですが、次第に退屈を覚えつつこれからの方向性を模索している最中でした。
プロの指揮者として活動を再開するか、それともオペラの勉強に進むか。
オペラについての蘊蓄が長いのは、秋月先生の身内に関係者がおられるからなのでしょうか?
そんな中、二人で銀座に出かけた時に悠季の後援会会長である木村睦子さんに会う話では、圭と睦子さんの海千山千同士の対決といった様相を見せていました。いいですねぇ、こういう酸いも甘いもかみ分けた大人の女性って。
この時の話題として出たのは、圭がM響に復帰する際に高田事務長に密に申し出していたのが悠季を客員コンマスに採用するという提案だったということでした。
悠季は時間がなくて手に余ると渋っていましたが、はたして実現するのでしょうか。以前富士見音楽ホールのこけら落としではM響有志で結成したオーケストラでコンマスをつとめていたわけですから、あり得ることでしょうね。
また、ビオラを下見に出かけた楽器店では、『オヨ子』の話題も出てきてとても楽しかったです。
悠季のコンサート活動が順調な様子も出てきましたが、一挙にコンサートに演奏する予定の曲が18曲も出てきたし、後半ではコンサートで演奏した曲も数多く、昔のフジミとは格段の差ですね。
予定曲の中にはフォーレの子守歌も出てきて、つい最近この話を私の創作に使ったので嬉しかったです。素敵な曲ですよね。
悠季がフランスでマルセルたちと四重奏に参加する話になったのですが、その練習台として日本でもカルテットを組む事になり、圭がビオラを受け持つことになりました。
悠季は第二バイオリン、マルセルは第一バイオリンで、ひも付き座布団装備でどっかりという表現が気に入りました(笑)
凝り症の圭は本場クレモナまで出かけて思い通りのビオラを手に入れたのですが、いざこれで悠季と協奏出来ると喜んだのもつかの間、プロのバイオリニストと自分との差を思い知って愕然となります。
天才の鼻っ柱がくじかれることになってちょっと気の毒でした。
プロのバイオリニストというのは音色が優れて魅力的であることが必須なのだということは理解していたのですが、音量もかなりなものが必要になるのですね。
最近TVでコンクール優勝した方のドキュメンタリーを見たことで気がついたのですが、恩師のコメントとして、『彼女は筋力があるから音量がある。だからヨーロッパのバイオリニストとも音量では負けず互角に活躍できるだろう』というようなことを言っていました。
確かにコンサート会場の隅々まで響かせるわけですから、プロは音質と共に音量も必要なわけですね。
思い出すと「オー・ソレ・見よ」の中で圭がお祖父様に悠季の演奏テープを聞かせた時に、堯宗氏は「線が細い」と感想を述べていましたが、音量の意味も入っていたのかもしれないですね。
閑話休題。
さて、圭は正面から悠季のバイオリンの音をガンガンに浴びせかけられた圭はノック・アウト状態になったわけですが、それでもくじけず悠季のレッスンを受けながらビオラの練習を始めます。
半ば逃げ出したくなくなるような思いをしながら必死でビオラ修行にはげみ合同練習に臨むのですが、悠季になんとか合格の『よくできました』の言葉を貰います。
圭にとって頑張った末に感激の言葉を得たことで、野心を掲げて邁進する高揚を思い出します。
「さらなる成功を求めて困難に挑み続けるのが喜びである『野心家』という生き方」と圭は形容していますが、再び指揮者として復活する決意をすることになったわけです。
悠季は意図することなく圭のプロの指揮者としての活動再開の背中を押すことになったようです。
もう一本の「通奏低音」は悠季視点で、フランスでの本格的なコンサート活動の様子が描かれています。
「カルバナーレ」やライナーノートの中ではちらりと語られていましたが、今回はたっぷりで満足です。
悠季がプロのバイオリニストとしてのリサイタルの様子を、フジミスト様たちのこうなったらいいなーという願望の同人誌ではなくて、作者様の文章で読めることになるとは感無量です。
ピアニストの吉柳さんとマネージャーの井上(旧姓)さんの三人の道中がとても楽しかったです。
そう言えば宅島さんの結婚式はいつの間にか終わっていたのですね。ちょっと残念でした。フジミの定演でシベコンの1・3楽章をやった事も抜けてますね。
悠季のリサイタルは、多少のトラブルはあっても順調なようですね。ディジョンでは井上さんが落ち込むようなトラブルがあったようですが、どんなことだったのかは語られないようです。
リサイタルはどこでも熱心なリピーターが出るほど好評なようで、この先のスケジュールも安泰になりそうでよかったです。
パリで圭と合流した晩の事、悠季の「僕は真正のゲイだ」という告白するシーンは、悠季自身は軽い告白のつもりだったのかもしれませんが、圭の滂沱の涙を誘う事になります。
本文始めに書かれていた、悠季が女性に惹かれてしまうのではないかという圭の長年の不安が、悠季の告白によって圭が悠季を本来の異性愛者から捻じ曲げてしまったことへの後ろめたさという罪悪感を解消してくれ、深い安堵をおぼえたようです。
が、ことはそのまま終わらない。
今度は世界中が圭のライバルって・・・笑えますね(笑)
ラブラブぶりはこれからも続くのでしょう。ぜひまた続きが読みたいと思いました。
リクエストによって続きもありそうですので、ぜひ次は悠季のCD制作の時の話が読みたいです!
あ、出来れば燦子お母様たちの話も引き続きリクエストで(笑)
追伸
今回の外伝では、肌色シーンの挿絵が2枚もあるのが今までとは違っていましたね。
後の方の悠季の告白で圭が泣いている挿絵(P211)では、隠れている悠季と圭の足がどうなっているのか、よくわからなかったのですが・・・・・。σ(^◇^;)
それって私だけでしょうか?(爆)