招待










僕はいそいそと寝室のピローランプを灯して、柔らかな闇に部屋の中を支配させた。

長かったツアーがやっと終わり、ようやく今夜、悠季が我が家に戻ってきてくれた。

僕の休みは彼の予定とすり合わせてあり、これから15日と9時間は二人でいられる。

そして、その先の予定は・・・・・今は思い出さないようにしている。考えれば切なくなってしまうからだ。





悠季は今シャワーを浴びていて、僕は彼が出て来るのを待っている。

きっと神経をすり減らし肩をガチガチに凝らせて帰宅しているはず。

悠季をくつろがせるために、マッサージをしてあげなければ。

もちろん彼との熱い行為を期待しているのも事実だが。

シーツ類は全て取り換えた。冷蔵庫の中には数種類のビールとミネラル・ウォーター。

マッサージ用のオイルとタオルはベッドサイドに。

もちろんジェルとコンドームもたっぷりと。

あとは悠季が出てくるのを待つだけの状態になっている。

いや、あまりにも期待しているように見せては悠季におかしがられてしまうかもしれない。

ここはごく平静に、さりげなく迎えなくては。






「ああ、さっぱりした」

ごしごしと頭を拭きながら、悠季はバスローブ姿で寝室へと入ってきた。

「疲れたでしょう?マッサージをしましょう」

「うーん、それほど肩は凝ってないんだよね。・・・・・あれっ?」

そう言うと、ベッドには寄らず、すたすたと窓際へと歩いていく。

「ねえ、今夜は月が綺麗だね!満月じゃないけど・・・・・月齢13日くらいかな」

悠季、なぜベッドに来てくれないのですか?

僕は月に見入っている悠季にじれて、ベッドから降りて窓際へと歩み寄り、背後から彼を抱きしめた。

バスローブの襟元から悠季の香りを聞く。

うなじに鼻を寄せ、首筋をたどっていくと、彼のからだがびくりと震えた。

「不思議ですね、僕と同じシャンプーを使い、同じ石鹸を使っているはずなのに、君は僕よりも甘い香り がする」

耳元にささやくと、一気に体温が上がったようだった。

「き、気のせいだよ」

そう言いながらも僕の腕からは逃げようとはしない。

それをいいことに僕はバスローブの隙間からするりと手を伸ばし、胸を撫でると触れたとたんに彼の乳首がかたく凝ってきた。

「ああ、君はなんて感じやすいんでしょう」

こちらはどうだろうか?

僕は下へと手を差し伸べると悠季の股間をまさぐってみた。

下着は・・・・・着けていなかった。

僕の手が触れるか触れないかの間に、彼の昂ぶりも立ち上がっていた。

つまり・・・・・・・・・・?


なんと鈍いことだ!


僕は気がつかないうちに悠季からの招待状を受け取っていたらしい。

「ずっと君の手に触れられたくてさ。だからこんな・・・・・」

震えるようなささやき声で告白してくれた。

ああ、悠季!





悠季が素直にセックスをねだることはあまりない。

シャイな彼は、目やさりげない言葉で僕に誘いをかけてくるのだが、たまに誘うことにも照れて、怒りだしたりすることがあり、僕を困惑させたこともある。

今回も同様だったらしいが、幸いなことに悠季に僕の鈍さに気づかれる前にうまく彼の誘いに乗れたようだ。




「悠季・・・・・」

甘いささやきで悠季のからだを射すくめてしまう。

温かい吐息を耳元に吹き込み、唇と舌で首筋をたどる。

「圭・・・・・」

彼の少しかすれた震えるようなささやきが、更に煽る。

「そのまま立っていらっしゃい」

「えっ、ここじゃいやだよ。ベッドに・・・・・」

「君がこの場所で抱き合いたかったから、僕を誘ってくださったのでしょう?」

「そ、そんなこと・・・・・っ!」

しかし口では抗議していても、本気で逃げようとしないということは、つまり君もこの状況を喜んでいるということだ。

「こんな場所で始めるなんて、誰かに見られちゃったら・・・・・っ!」

赤くなってそう言い募る。窓に映る困惑した表情に煽られると言ったら、きっと怒るのでしょうね。

「二階の窓を外から見る事は出来ないのはご存じでしょう。外からは人が立っていることくらいしか分かりません。

それに、たとえ誰かがこんな深夜に歩いていたとしても、通行人がわざわざこの家の二階を見上げていくことなどありません」

「だ、だって・・・・・そんな・・・・・!」

しかし僕の愛撫を濃くすると、彼の抗議はすぐに消えた。

唇と舌を使って悠季が着ていたバスローブをすべらせて肩をむき出しにした。

すこし震えたのは僕の舌が撫でて行ったことでひんやりとしたのだろうか。

艶めかしい曲線を描く彼の肩のラインが薄明るい月の光を受けてガラス窓に映っている。

もちろん僕の愛撫に反応する、切なげな表情も。

バスローブをかき分けて、彼の蕾に触れると既に熱く息づいていた。

ゆっくりと指を一本差し込むともう我慢できないというように僕の指を喰い締めた。

「け、圭っ!」

悠季の声が切迫する。

まだ、ですよ。

僕はじらすようにゆっくりと彼のそこをほぐしていき、震えて力の入りにくくなった腰を支えておいてから、ぐっと昂ぶりを押しつけた。

熱く柔らかな彼の中へと侵入する

「あ、ああ・・・・・っ!」

ため息に乗せて悠季がそそられるような甘い声をあげた。

あえぎは次第に早まり、切迫さを帯びてくる。

「け、圭。ちょっと待って!」

かすれた声が訴えてきた。

「もう我慢できませんか?」

こくこくとうなずきながら、必死にいってしまいそうになるのをこらえていた。

痙攣するように彼のそこは僕を締め付け、熱を帯びたからだはしっとりと汗に濡れている。

足は震え、膝が崩れそうだ。

ガラスに映る彼の表情は、実に色めかしく、妖艶だった。

「イってもいいのですよ」

「だ、だって君をもっと感じていたいのに、こんなに早く終わりたくないのに・・・・・っ!」

「悠季・・・・・!」

唇を噛んでこらえているのを見て取ると、僕は腰を支えていた左手を外し、彼の顎へと伸ばした。

「唇が切れてしまいますよ」

その瞬間だった。

「あ・・・・・っ!!」

彼のそこが不随意のけいれんを起こし、うねるような動きで僕を締め付けた。

「ゆ、悠季!」

平静を装っていたが、悠季のそそられる顔や動きでもう僕も限界を迎えていた。

彼の腰を抱えると、激しく動き始めてしまう!

「ひっ!だ、だめだ!圭っ!」

達して敏感になっているところを激しく突き上げられて、もう一度追い上げられた悠季は悲鳴を上げた。

しかし、止めることは出来ない!

固く閉じられかけたところをこじ開けるようにして進み、熱い柔肌をこすりあげるようにしてリズミカルに動いた。

なんという快感!なんという悦楽!

「い、いきます!」

うわずった声で言うと、溜息のように悠季が僕もと甘くつぶやいた。

その声に煽られて、ひときわ激しく動き、僕はイった。





ひとしきり寝室の中には二人の荒い息づかいだけが響いていた。

「もう・・・・・!こんなところでするなんて、変態チックじゃないか」

甘いデザートキスを堪能した後、しばらくの間留守をしていたらしい悠季の理性が、そんな抗議をしてきた。

しかし、その言葉をちらりと振り向きながらの流し眼の睨みで言うのでは、かえって逆効果ですよ!

「なっ・・・・・圭!だ、だめだって!」

驚きの声は、彼の中で僕が復活してきたことへの抗議。

「無理です!」

また動き出せば、悠季の顔は驚きと少しの怒りとそして何よりも快楽をむさぼっている気持よさそうな表情が窓に映っていた。








ああ、悠季。

すみません。まだ僕は自分を抑える事が出来ないようです。

ベッドの中では、いつまでもわがままな男を許して下さい。














2012.3/10 up