激情

「悠季・・・・・悠季・・・・・」

「う・・・・・ああ・・・・・んっ!」

僕が耳元に狂おしく繰り返すささやきに、悠季は身震いした。

「も、もう・・・・・、無理っ・・・・・!」

「ここはそうは言っていないようですが・・・・・」

「なっ・・・・・そんなこと・・・・・!」
   
「きみは素敵だ。ほら、こうやって・・・・・」

「ああっ!も、もう、だ、だめだって・・・・・!」






今宵、何度目かの絶頂を迎え、悠季の瞳はもうろうとしている。

こうやってからだの奥深くまで串刺しに差し貫き、蹂躙している。

手足をからめ、きつく抱きしめ、ぬめる肌をぴったりと合わせて、体温も汗も体液までも混じり合わせている。

熱いあえぎは濃厚なくちづけと共に分け合って、鼓動までも同調しているように思われた。

そして、ついには二人が一つに融け合っているような感覚にとらわれる。




が、しかし、それはしょせん錯覚にすぎないというもの。

熱狂の時が過ぎれば、また互いのからだは二つに分かれてしまうのだから。

寂寥感と敗北感が僕を襲い、思わずうめく。

出来る事ならば、悠季と永遠に繋がって、融け合って、二度と離れないようになりたいと願う。


―――― 叶わぬことであると分かってはいても。


そんな僕の感情の起伏を、悠季は目ざとく僕の表情から読み解く。

「・・・・・どうしたんだい?」

まだ息も整ってはいなくて、かすれきった声でささやいてきた。

うるんだ瞳には、まだ先ほどまでの快楽の余熱がくすぶっている。

力を失ってかすかにふるえている手が、僕の頬を包む。

ナーバスになった僕の心を癒してくれる、優しい手。

「・・・・・愛しています」

「うん、僕も」

少し舌足らずになっている声は、疲労を映しているのだろう。それでも、僕を気遣ってくれる。

甘えることのできる、なんという心地よさ。




ああ、そうだ。

二人が融け合っていたら、こんな心地よい声を聴く事も、優しい手も喪うのだと思うと、

やはり二人でいるのがいいのだと思える。

「おやすみなさい」

「・・・・・うん。・・・・・おやすみ・・・・・」

眠りの中へと引き込まれながら、僕にほほ笑みかけてくれる。

悠季のそんな表情を見ているだけで、僕は心が凪いでいくのを知った。



「愛していますよ、悠季」

僕のささやきは、夢うつつの中で受け取ってもらえたらしい。

悠季を腕の中に抱きしめて、あたたかな寝息と匂いに守られて、僕は穏やかな眠りへと誘われて行った。



2012.1/6 up