ネ イ ル

普段は爪は伸びる前にやすりで削っている。

 やすりなら、爪きりで切った時のようにがたがたにならずに済むからだ。

 爪が伸びていれば愛しい人を傷つけてしまいかねないので、気をつけている。

 美しい肌に残す所有の印はキスマークだけでいい。

 白い肌に花が咲いたように散りばめる。

 高揚して肌が桃色に染まるとそれも色をまして艶めく。
 


 ふ。


 小さくため息をついて、爪を整えていた手を止める。

 次の逢瀬まで、何度、爪を整えるのだろう。

 切ない思いを振り切って、手入れを終えた。