夏の朝の過ごし方は
「今日も暑そうだねぇ」
カーテンを開けながら悠季がぼやいていた。
寝室にはクーラーが効いていて快適な温度に設定してあるが、窓の外の日差しは強くいかにも暑そうだ。
「梅雨明けしたばかりは暑いそうですから」
「梅雨明け十日だったっけ?これから暑い日が続くと思うとうんざりするよ」
「日本の夏は湿気が多いですからね。バイオリンにとっても日本の風土は厳しいですね」
「うん。それが一番問題だよね」
悠季は答えながらシャワーを浴びに行った。白い背中には昨夜の情交の痕がいくつもくっきりとついているのが見える。
夏は襟元から見えるところにつけないように注意しなければならないのが厄介だが、そのぶん見えなければ数を増やしても文句を言われないところが、いい。
もっとも、あまりつけすぎると悠季の機嫌を損ねるので、その兼ね合いが難しいが。
「手伝います」
僕も続いてシャワールームに入っていった。
彼は僕が後始末を手伝おうとすると恥ずかしがってなかなか手伝わせてくれようとしない。それは今も昔も変わらないことで、初々しい恥じらいが愛らしくてたまらない。
こうやってなかば強引に押しかけていくと少し困ったような顔をして見せるが、僕が手を出しても拒まずようやく身を任せてくれる。
「・・・・・力を抜いて」
彼のアナルに指を入れて昨夜僕が放ったエキスをかき出してあげると、全身を震わせながら僕の指の動きに反応していた。
「・・・・・ん・・・・・あ・・・・・」
シャワーの音にまぎれて小さく声をこぼした。
ちらりと彼の前を見ると、どうやら僕の洗浄行為に感じてしまったらしい。
「こちらも綺麗にしませんと」
「だ、だめっ!」
僕が彼の半勃ちしているものに手を出すと、あわてて自分の手で押さえてしまった。
「き、昨日さんざん、やったろ?もういいじゃないか!」
「ですが、このままでは君が困るのではありませんか?」
そう言って背後の方に指を増やし、中をくちゅくちゅとかき回してあげると思わず息を呑んで、からだを強張らせていた。
あいている方の手で悠季の腰を掴んで揺すってみせると、昨夜の行為を思い出したのかきゅっとアナルが締まっていく。
「あ、あん・・・・・!」
思わず自分自身を掴んで、必死でエクスタシーの波をやり過ごそうとしていた。何度も締め付けられる僕の指は心地よく、これが違うものであればと思ってしまう。彼のつつましく締まっている場所に僕を食い込ませたい!彼の熱い襞の中に包まれたい!
「手を放さないつもりですか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
悠季の手は動かない。僕が見ているのが分かっているせいで羞恥心があおられて、逆に外せなくなってしまったのだろう。
「いいですよ。そのままでいてください」
僕は彼の手に僕の手を重ねてから、背後の指を引き抜いた。
「・・・・・ん」
名残惜しそうに僕の指をひきとめようとする。
悠季の腰を引き寄せると、僕は一気呵成に突き入れた。
「あ、あうっ!」
「大丈夫ですか?」
余裕がなくなってつい急いでしまった僕はあわてて彼の様子をうかがった。
・・・・・おや、このままいけば、彼の素敵なしぐさが見られそうですね。
「だ、大丈夫・・・・・」
衝撃で少し萎えていた彼自身を、悠季が育て昂ぶらせていた。
いつもなら理性の枷が強く、自らの分身を愛している姿など見せるはずはなかったが、昨夜の余韻のせいか、どうやら夢見心地になっていて無意識に自分から自慰をしているらしい。
夜の帳の下りたベッドの上で、快楽に夢中になっているときには、ときたま見せてくれることがあるが、こんなに明るい朝の日差しの中では初めてだ。
僕に今まで見せたことのない姿を見せてくれている!
こうやって悠季との行為はいつもどこかに新鮮さを見せてくれて飽きることがない。
もちろん、彼に飽きることなど考えることも出来ないが。
僕は悠季の腰を掴み、ぐっと根元まで押し込んだ。そして今度はゆっくりと引いてぎりぎりまで引き抜き、また再度押し込んでいった。
「も、もっと・・・・・!」
こんなにゆっくりのスピードではじれったいのだろう。彼は自分から腰をくねらせて快感を得ようとしていたから。
「でしたら、どうぞ君から誘ってください」
「・・・・・な、何?」
もうろうとなって半ば意識をとばしかけていた悠季には、僕の問いかけの意味がよく分からないらしい。
「もっと足を開いて腰を突き出して、『欲しい』と意思表示をして、さあ!」
「ああ、い、嫌っ・・・・・!」
口ではそう言いながら、彼のからだは素直に僕の言うとおりにしてくれる。
「ほら、こちらも・・・・・」
「だ、だめっ・・・・・!」
悠季のほっそりとした手に僕の手を添えた。彼の手が薔薇色に染まった昂ぶりに絡みつき撫でさすっているのを見ているのは、・・・・・とても刺激的だった。
「あ・・・・・い、いいよ、すごく・・・・・っ!」
「ええ、いいです!最高だ、悠季・・・・・っ!」
悠季は全身を震わせながらイき、僕は引き絞られた収縮に合わせて熱く狭い彼の中へと自分を解放させた。
「・・・・・もう。僕たち朝っぱらから何をやっているんだろうね」
悠季がため息混じりにぼやいた。
確かに。すみません、今度はいたずらはしませんので。
ふらふらとなっている悠季をもう一度洗い直すと素直にされるがままになって、彼自身を僕の手にゆだねてくれた。
少し熱めのシャワーで意識をはっきりさせ仕上げに冷たいシャワーで引き締めて、ラベンダーの香りがついている柔らかなバスタオルで拭ってあげた。
「朝食は僕が用意します。君はあとからゆっくりいらっしゃい」
「うん。頼むよ。このままじゃ動けない」
悠季はシャワーですっきりしたはずなのに、まだ少しとろりとした目をしていた。このままベッドに戻ればまた寝入ってしまいそうだった。
しかたない、昨夜に続いて僕が無理をさせてしまったのだから。少し休んだ方がいいかもしれない。
ならば何時食べることになってもいいようなメニューにした方がいいだろう。
僕は身支度を整え、階下へと降りていった。
寝室から出ると、熱帯夜の余韻があちこちに残っている。僕は急いでエアコンをつけて台所と音楽室の温度が快適になるように設定した。
朝食が終われば悠季はバイオリンの練習をしたいと思うだろう。ただでさえ夏の日の午前中の貴重な練習時間を奪ってしまったのだから少しでも協力しなければ。
「さて、朝食のメニューは、と・・・・・」
ちらりと時間を見ると、午前とはいえもう日差しがきつい時間になっている。これならば朝昼兼用の食事にした方がいいかもしれない。
僕は冷蔵庫の中を調べて、数品のおかずを用意した。数年前なら卵を茹でるくらいのことしか出来なかった僕としては格段の進歩と言えるだろう。
「そろそろ悠季を起こしましょうか」
その時だった。ふと、以前悠季の留学中に行われたフジミの演奏会のことを思い出していた。悠季がチャイコンを弾いて、彼独自の演奏を開花し始めているのを実感した日の翌朝。
二人で朝寝をして、ようやく起き出そうとしたとき、邪魔な客が大勢で押しかけてきたことを思い出したのだ。
「・・・・・嫌なことを思い出してしまった」
僕は思わず頭を振って、浮かび上がってきた記憶を振り払った。
その時だった。
ジリリリン!〜♪
玄関のベルがにぎやかに鳴っていた。それもなぜか、いつもより軽薄に聞こえる。
どうやら僕が思い出した記憶とは、光一郎氏からの警告だったらしい。
桐ノ院圭氏、お誕生日おめでとうございます!
今年は年男ですね。
でも、未だにあちらもお盛んなんでしょうね・・・・・。(笑)
2007.8/8up