「君って本当に首を触られるのが苦手だよね」
悠季はくすくすと笑いながら言った。
確かに彼の言うとおり、僕は悠季の細くて器用な指にくすぐられるのがひどく苦手だ。
もっとも、彼と出会う前の僕にそんな弱点があるとは思ってもいなかったのだから、
これは悠季専用の弱点なのだと思う。
しかし悠季、君にも弱点はあるのですよ。君に教えることはありませんが。
彼の太ももの裏側を撫でさすると、それだけで身を震わせて感じてくれる。
腰の付け根、いわゆる尾骨のあたりを舌で愛撫すると、それだけで彼の昂ぶりからは先走りが滲む。
けれど、そんなウィークポイントを持っていることを君は知らない。
僕が決して知られることのないようにしているからだ。
ここを愛撫するときは、悠季がすっかりその気になって僕の愛撫に夢中になっているときだから、他にもある彼のイイところと同様に敏感になっていて、感じているのだと思いこんでいるのだ。
だからこのあたりが、触られただけでその気になってしまうような重大な弱点だとは知らない。
なぜ僕がそれほどまでにこの場所を知られないようにしているか。
それは、彼がまだ眠っている早朝に、彼にその気になってもらうためなのだ。
朝、まだ彼が眠っている時、
僕は悠季の寝姿を堪能する。
無邪気に眠っている彼は、時々無防備な姿態をさらして僕を誘ってくれる。
いや、彼にその気はないのだろうが、僕にとっては娼婦同様に誘い込んでいるとしか思えないのだ。
ブランケット越しに見ても、ほっそりとして均整の取れた肢体が良く分かる。
僕はそっとブランケットをはいで、生まれたままの悠季を鑑賞する。
ただし、外気温のことを考えて長時間は無理とわきまえてのことだ。
白くなめらかに輝く肌、どこを見ても綺麗な骨格と筋肉のついた肢体。
今は眠っている彼自身も悩ましい。
僕はうやうやしく、この貴重で何にも換えがたい宝物に心を込めてキスをする。
驚かせないようにゆるゆると、ただし彼の官能を呼び覚ますように効果的に彼に施す丁寧な愛撫。
彼の太ももの裏側を撫で、尾骨から背中へと舐め上げていくと ―――――
――― もうそれだけで陥落する。
悠季は自分の寝起き時の感じやすさを、何も用事がない日の朝だから余裕が出来て箍が外れるのだと思っているらしい。
だが彼を思う存分堪能する為に、僕がそういう日を選んでから、悠季の弱点に触れているとは気がついていない。
そして、これからも悠季が気がつくことはないだろう。僕が十分心得ている限り。