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(水底の歌 外伝)








悠季は引き出しの奥に隠してある桐の箱を取り出した。


これは圭の形見。彼の形代。


圭が生きていた間はこんなものを作ってと怒って見向きもしなかったディルドだが、今となっては悠季の唯一の慰めとなってくれていて、時たま出しては自分で自分を慰めていた。

例え朝になってもっと切なさが増してきても歯を食いしばって我慢するほかなかったから、ほとんど使うことはなかったけれど、こんな夜は朝になって辛くなってももうどうでもいい気分だった。





そっと箱から取り出してみる。

温かくもないし圭の匂いもない。

まして彼のからだがそこにあって悠季を抱きしめてくれるわけでもないが、あの形だけは圭とそっくりに出来ていて、これだけが悠季をいくらかでも慰めてくれるものだ。

悠季はそっとソレの周囲を舌でなぞってみた。圭が好きだったように先端を丸く円を描くように舌で嘗め回し、根元から先までをなぞり、それからのどの奥深くに銜えた。

「・・・・・ん、・・・・・んふ・・・・・」

 じゅぷじゅぷとのどの奥でそれを上下させながら、もう片方の手で下着を脱ぎ落とす。

そして熱い先走りを滴らせている自分のモノをつかむと眼を閉じて圭がしてくれたしぐさを思い出しながら優しく扱いた。

「ん・・・・・、ああ、イっちゃいそうだよ、圭・・・・・」

 悠季はしゃぶっていたソレを口から放すと、大きく足を開いて自分のからだの奥深くに埋め込む用意する。

久しぶりの行為はきつくなるのが分かっているからしっかり準備しなくてはならない。

 引き出しに入っているジェルを取り出すと、自分の指に絡めて蕾の奥へたっぷりと塗りこめる。

「・・・・・う・・・・・」

 圭の指が与えてくれていたものと違って、襞の奥に触れて感じるあの気持ちよさはなかなか悠季の身に訪れてくれない。

「・・・・・圭・・・・・圭・・・・・け・・・・・い・・・・・!」

目を閉じて、圭が耳元で囁いてくれる言葉やあちこちに施してくれる愛撫を思い出して、徐々に興奮を高めていく。

 指を口の中に入れてしゃぶったり、ジェルで濡れた指で、乳首をゆるゆると撫で回したり摘んだり・・・・・。

 そして・・・・・ぞわりとソコが熱く柔らかくほぐれたのを感じた上で、たっぷりとジェルを付けて濡らしたディルドを蕾に押し付けた。

「いっ・・・・・!痛ぅっ・・・・・!」

 久しぶりに味わう圧迫感。ひきつりそうな襞をなだめながら、ゆっくりと圭のソレを埋め込んでいく。中に入っていくに従って、ゆるゆると思い出していく快楽。

 なんとか奥まで収めてしまうと、ゆっくりとかき回した。

「ああ・・・・・圭っ!いいよ・・・・・」

 快感を覚える場所を狙って何度も抜き差しした。ちりちりと覚えのある感覚が身のうちに走り、反対の手で自分自身を掴み取って扱き始めた。

「ああっ!圭、け・・・・・い・・・・・っ!イイっ!・・・・イクっ!・・・・・イっちゃう・・・・・!」

 頭が一瞬真っ白になって、ちかちかとまぶたの裏にハレーションが起こる。扱いていた手の中には熱いほとばしりが溢れた。



 頭の中いっぱいに溢れていた快感がゆっくりと引いていくと、それに代わって悠季に中に沸き起こってきたのは、この行為をいつもやった後に起こるおなじみの気分。

 深い失望感と自分への嫌悪感。

「・・・・・こんな、こんなの・・・・・圭の代わりなんか絶対に出来ないんだ!!」

 悠季は自分の中から引き抜いたディルドを部屋の隅へと力いっぱい投げ捨てた。が、引き抜いた瞬間に、自分の中でまた快感がわき起ってアナルが浅ましく痙攣した。

それが自分のからだの反逆に思えてまた傷ついた。

心の箍は酒の酔いと自慰でもろくも外れてしまった。

悠季はベッドにうつ伏せると、思い切り子供のように泣きじゃくってそのまま眠ってしまった。

  






 眠り込む前に一瞬自分の名前を呼ばれた気がしてぼんやりと泣き腫らした目を開けたが、彼の眼鏡無しの目に映ったものは、うっすらとカーテン越しに見える、窓からの満月のみ。

 悠季は月があざ嗤っているように思えて急いで目をふさぎ、そのまま闇の中に深くずるずると意識が堕ちていくのに任せていった。













2005.9/5 up